理事長就任のご挨拶


 2017年9月23日に開催されました第41回一般社団法人日本自殺予防学会(筑波大会)総会において、理事長職をご勇退された齋藤友紀雄先生に代わり、第4代理事長に選出されました張賢徳です。本学会の創設期から中心的な役割を果たしてこられた齋藤友紀雄先生の存在はあまりにも大きく、その後を継げるものかと甚だ不安ではありますが、学会の次のステージへの橋渡しとして微力ながら力を尽くしたいと存じます。

 本学会の歴史は1970年に遡ります。当時、東京都杉並区高井戸保健所長であった増田陸郎先生が、自殺予防の実践と研究に関心のある有志に呼びかけて結成した「自殺予防行政研究会」が、その始まりです。その後、名称から「行政」が外されて活動の幅を広げ、さらに1983年にその研究会は日本自殺予防学会に改変され、加藤正明先生(当時、国立精神衛生研究所長)が初代理事長に就かれました。増田陸郎先生は事務局長、齋藤友紀雄先生は事務局次長として学会の運営を支えました。加藤正明先生が2003年にご逝去された後、副理事長であった秋山聡平先生が第2代理事長に就かれました。秋山先生は精神科医で、自殺予防活動に熱心に取り組まれ、北九州いのちの電話を設立された後、齋藤友紀雄先生とともに日本いのちの電話連盟の結成に尽力されました。2005年に秋山先生が88歳をもってご逝去された後、2006年から齋藤友紀雄先生が理事長として学会を支えてこられました。なお、増田先生は2006年に名誉理事長にご就任され、翌2007年、94歳でご永眠の途に就かれるまで、自殺予防への関心と情熱を失われることはありませんでした。

 本学会はいのちの電話とともに歩んできました。1971年発足のいのちの電話はドイツ人宣教師のルツ・ヘットカンプ氏が創立の提唱者ですが、クリスチャンであった増田陸郎先生も創立時から関わり、東京いのちの電話のボランティア相談員として、その後永らく奉仕されました。自殺予防学会といのちの電話は発足時から、増田先生始め、齋藤友紀雄先生、稲村博先生など双方の中核となった人たちが重なり合っていたために、理想的な協力関係が構築されました。いのちの電話はボランティアによる自殺予防の実践団体であり、自殺予防学会は自殺予防研究に関する専門機関という位置付けです。

 日本は戦後、国際的に見て自殺率の高い国であり続けてきましたが、自殺を「本人の決断」として容認する社会文化的な風潮のためでしょうか、1998年に自殺の激増を迎えても、今世紀に入るまで、国を挙げて自殺予防に取り組むという動きはみられませんでした。このような社会情勢のもと、本学会は、歴史は長いのですが社会的認知度は低く、会員数も200名程度で推移していました。

 2006年に齋藤友紀雄先生が理事長になられ、私が事務局長に任命されました。学会の運営は理事長、事務局長に加え、飯森眞喜雄先生、松本寿昭先生、丸田敏雅先生ら常務理事が中心になって行われ、2007年から年次学術集会が定期開催されるようになりました。その後、河西千秋先生、大塚耕太郎先生、影山隆之先生、太刀川弘和先生に常務理事会に順次加わっていただき、学会活動の活性化がなされてきています。それに伴って認知度も高まり、会員数は500名近くになっています。2016年5月には国際自殺予防学会(IASP; International Association for Suicide Prevention)と協働で日本で初めてIASPアジア太平洋地域大会を開催しました。日本自殺予防学会にとって記念すべき年となりました。齋藤前理事長を中心に執行部の努力は多大なるものがありましたが、同時に、会員の皆様を始め、多くの関係者の方々のご協力なくしては実現し得ないものでした。この場をお借りして、あらためて厚くお礼申し上げます。

 さて、本学会は2017年3月から一般社団法人になりました。これを機に、より一層の社会貢献を目指す所存です。いのちの電話と連携しながら、学会として成し得る貢献を果たしていきたいと思います。また、本学会は日本学術会議協力学術研究団体にも認定されています。会員の皆様のご協力を得ながら、自殺予防に関するエビデンスの創出と活用を目指したいと思います。国際的には、本学会は国際自殺予防学会(IASP)の公式連携組織です。IASPは世界保健機関(WHO)の公式連携機関です。IASPとWHOとの連携も強化し、情報共有と国際貢献にも努めたいと思います。

 先人の尊い貢献に感謝しつつ、現在の会員の皆様とともに、本学会の果たすべき役目を考えながら、より良い社会づくりに貢献していきたいと思います。皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

一般社団法人日本自殺予防学会理事長 張 賢徳
(帝京大学医学部附属溝口病院精神科)

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