自殺予防のこれまで・これから~未来にいのちをつなげるために~
Suicide prevention, up until now and from now on: bridging life to the future
第41回日本自殺予防学会総会 大会長
筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学
准教授 太刀川 弘和
最近我が国の自殺者数は減少を続けており、平成27年度に二万四千人台まで減少しました。これは、本学会の活動をはじめ、国をあげて自殺予防に取り組んだ「これまでの」成果といえるでしょう。一方我が国の若者の自殺率は、徐々に増加しており、10代から30代の死因の第一位を占めています。従って若者の自殺予防は、少子高齢化社会に差し掛かっている我が国の未来において喫緊の課題です。さらに、インターネットなどの新たなメディア対策、エビデンスのある医学的対策の普及、引き続く災害後のこころのケアなど、自殺予防は「これからの」対応を求められているといえるでしょう。
このような自殺予防対策の時代的変化を踏まえ、総会では、自殺予防の「これまで」を振り返り、「これから」を模索する、温故知新の場にしたいと思います。学際的な観点から自殺予防の歴史を概観し、新しい知見や活動も積極的に紹介することで、現在自殺予防活動に携わっている臨床家・支援者のみならず、これから自殺予防に取り組む人たちにも学びの場となることを目指します。このため、我が国有数の研究者による、自殺予防の歴史に関する教育講演・特別講演を準備します。さらに、若者、災害、宗教など今日的な社会問題と自殺との関係をめぐる刺激的なシンポジウムも計画します。「いのちの電話シンポジウム」と併せ、本学会の議論は、わが国の自殺予防対策、メンタルヘルス対策の新たな展開に寄与するものと確信しています。
開催地であるつくば市は、歴史的に自殺予防と縁があります。筑波研究学園都市としてこの地が開発された当初、不幸な事件が生じ、早くから自殺予防の意識が芽生えました。故筑波大学稲村博先生は、本学会の前身である自殺予防研究会と「いのちの電話」の活動に尽力されました。その後現在までつくばは、メンタルヘルスの専門家・研究者を輩出し、様々な自殺予防の取り組みを続けています。一方で当市は、最先端の研究機関が集結し、新たなサイエンスとテクノロジーを生み出し、若年人口と学生数が茨城県で最も多い、若い未来の街であり続けています。自殺予防の歴史と未来を考えるには、この街がふさわしいと自負しています。本学会は、臨床・社会・心理・看護の枠をこえ、歴史的に初めてつくばの自殺予防・メンタルヘルスの研究者が一堂に会するエポックメイキングな会となります。
自殺予防に関心のある多数の皆さまのご参加をお待ちします。